まずはじめに、株式会社フューチャーセッションズ 芝池さんより、ラクワク(楽WORK)思考(※1)で関西ユニークな「女性のはたらく」をみつけるプロジェクト、「はたらく×bee」の一年間を通した成果について発表していただきました。
芝池さんの所属するフューチャーセッションズは、「すべての人がセクターの壁を越えてよりよい未来を創れるようにする。そのための革新的な方法論とサービスを生み出し続ける」ことをミッションにしています。課題解決には多様なステークホルダーが参画することや、参画してもらう仕掛け、課題の見せ方がとても重要です。
そこで、まずは「女性活躍」という課題を、そのままの言葉を使うのではなく、”自分たちにとってなにが課題なのか”ということをbee運営メンバーと芝池さんでしっかり語り合い、自分たちの言葉に翻訳しました。それが、「はたらく×bee」が投げかける問いである「女性が自分らしく自然体で、能力を思いのままに発揮しながら『長く』はたらくには?」です。
また、「女性活躍」を当事者である女性だけの問題に閉じるのではなく、より男性にも関わってもらいたいという思いから、「働く環境においてマイノリティー(になりやすい)女性の働き方が変わることで、関西全体の働き方が変わっていく」というメッセージを発信し続けました。
そうして4回のセッションから見えてきたことは、女性の働き方のありたい姿を阻害する問題の構図と、女性活躍におけるアプローチの変化の必要性でした。
※「はたらく×bee」詳しい全体レポートはこちら!
※ラクワク(楽WORK)思考とは→https://bee.workmill.jp/about
続いて株式会社OMOYA代表取締役である猪熊さんにお話いただきました。
猪熊さんは学生時代から「女性の自信形成」に興味を持ち、なぜ男性に比べて女性の方が自信を持ちにくいのかを心理学を通じて学んでこられました。その知見を活かしながら、「女性が豊かに自由に生きていくこと」をコンセプトに、女性を支援するさまざまな活動を展開されています。
働く女性が直面している「生きづらさ」の要因とは何でしょうか。
それは、時代の変化の中で「女性の生き方」も変化の渦中にあるからです。
「女性の生き方」の変化
●60代~80代頃
結婚して、子どもを産み、家庭を守ることが一般的。専業主婦が大半。
●40代~60代頃
専業主婦だけでなく、働く選択肢もあるがまだマイノリティー。先人が少ない中での働き方の開拓。
●20代~40代頃
働き方の選択肢が増えていく中で、自分らしい生き方の迷いや悩みも。
このように、世代によって女性の生き方の「当たり前」は大きく変化しています。母親をロールモデルにしがちな女性は、多様な働き方の選択肢が増えている現在でも、母親の「早く結婚して子供を産みなさい」といった言葉に強く反応し、自分らしい生き方への迷いが生じています。
また、「結婚するかどうか」「子供を産むかどうか」という選択は、大きく人生設計が左右されるだけでなく、その選択自体も自分一人で決められることではないため、不確実性が高いです。そういった女性ならではの「ライフスタイルの多様化」も、自分らしい生き方への迷いを深めている要因になっています。
選択肢が増えることは女性にとって幸せなことのはずなのに、「迷い」や「不安」が生まれてしまうのは、次のような心理が働いているからでした。
①選択肢が多いと、自分が選ぶ責任も増える。何かが起きる前に過度に心配しすぎてしまう。
②ソーシャル化やインターネットの普及によって、他の人の生活が透けて見える。羨望や比較によって迷いが出てしまう。
特に②は、SNS世代である20代~30代頃の女性ならではの悩みのように思います。
働く女性が直面している現実に向き合ったうえで、これまで以上に活躍していくために必要な要素とはなんでしょうか。
キャリアは、学歴・業界・会社名といった他者からも見える「外的キャリア」と、仕事観・やりがい・使命感といった自分だけに見える「内的キャリア」に分けられます。「外的キャリア」は状況によって気持ちのアップダウンが生じやすいですが、「内的キャリア」はアップダウンのない、安定したものです。この「内的キャリア」をしっかりと見据えることが「女性のはたらく」には重要です。
また、まさに今が「働き方」の過渡期ということもあり、「近くにありたい姿となるようなロールモデルがいない」という声もよく聞きます。ぴったりとくるロールモデルがいなくても、多様な生き方をしているたくさんの女性たちから、”彼女からはマネージメントスキル”、”彼女からは女性としての魅力を…”というように、素敵だと思うポイントを自由にカスタマイズして自分に取り込む、「カスタムキャリア」をつくることが大切です。
最後に、冒頭にもあげた「男性に比べて女性の方が自信を持ちにくい」ことについてですが、
女性→理想が高く(現実的で)理想をクリアできないと自信を持ちづらい。これまでの実績で自分を評価する。
男性→「今こうしたい」「今こう思っている」で行動に移しやすい。ポテンシャルで自分を評価する。
という男女差があります。女性の方が、高い基準をクリアしないと「OK!」と思えないのです。
過去の経験からくる自信(confidence)だけでなく、「自分はなんとかなる」「なんとか上手くできるだろう」といった未来に対する自信=自己効力感(self-efficacy)を強めていくことは、男性と対等にキャリアを積んでいくためにはとても重要になります。
女性が男性と同じように社会で活躍していくには、女性自身の実力を高めていくことも大切です。
特に身につけるべき「実力・スキル」
✔ ロジカルシンキング・メタ認知(客観的な視点、多様な視点)
✔セルフマネジメント、EQ (状況に応じて自分の感情をコントロールする力)
✔ コミュニケーション力、人間力(男性蔑視・敵対意識ではなく、共存共栄するしなやかな人間力)
✔ サーバントリーダーシップ(新しい形のリーダーシップ。ナレッジワーカーをマネジメントするリーダー)
✔ ファシリテーション力
✔ 信頼残高を貯める・高める
✔自らのWill(意志)を描き、実現する力など
女性を取り巻く環境についても再認識が重要です。
そもそも、男女の性差とはどのような要素があるのでしょうか?
生物学的・社会的・心理的な性差、そもそもの脳の構造の違い、性ホルモンの違い、男性らしさ・女性らしさといったジェンダー観、ストレスの感じ方…さまざまな性差がある中で、「これまで女性らしいと言われていたあり方」から「新たな活躍の場の開拓」にあたり、働く環境において女性は次のようなジレンマを抱えています。
いい女性であろうとすれば…皆に好かれるけど、能力は認められない
管理職につけば…尊敬はされるけど、「イヤな女」と思われるかもしれない
そういったジレンマを、女性が「オス化」することで回避してきたことがしばしばあるように思いますが、これからは「女性らしさ」や「自分らしさ」を活かした女性活躍の道を拓いていくことが大切です。
例えば、女性が得意とする「チームをまとめるコミュニケーション力」と男性が得意とする「目的を成し遂げる力」が組み合わさり、相乗効果となったとき、本当の意味で女性が活躍できている状態、と言えるのではないでしょうか。
また、男性上司が「女性を大切にしなければ」と思いすぎるあまり、「彼女には荷が重すぎるのではないか」といった思い込みで成長の機会を与えない、といった「無意識のジェンダーバイアス」も存在します。
性差や価値観の違いを理解し、異なる他者を理解する「相互の人間理解」が重要です。
続いて、京都に自社ビルを構える、ウエダ本社代表取締役の岡村さんにお話いただきました。
ウエダ本社は「オフィスのワンストップ窓口」として、オフィスのコンセプト、レイアウト、家具の選定まで一括して請け負い、新オフィスが稼働した後のフォローアップまでしています。ウエダ本社を指名された際の成約率はなんと8割を超え、京都を中心としたオフィスづくりで大躍進を続けられている、「はたらく環境の総合商社」です。
岡村さんがどのような考えで会社づくりをし、また「女性活躍」についてウエダ本社ではどういったことが起きているかを中心にお話いただきました。
かつて岡村さんのご実家の家業であるウエダ本社は倒産の危機を迎え、その危機を救うために家業へ戻られた岡村さんが考えたことは、
「会社ってなぜ倒産するのだろう?」
ということでした。
会社が倒産するのは世の中から必要とされていない・世の中の役に立っていないからではないか。そこで、
「世の中の役に立つ存在」になるために、困りごとに、ビジネスとして向き合う
ことを決めました。
そのうえでウエダ本社の存在意義を考えたときに、「京都」で70年以上オフィスに向き合ってきたことにも意義を感じ、「京都流議定書」という活動を2008年から毎年開催されてきました。
「京都流議定書」は、日本独自の価値観を世界へ発信していくために、日本の縮図ともいえる京都の持つ資産を分析し、その強みを再認識することを目指しています。このイベントで、京都に関わる自治体・企業といったさまざまなセクターに所属する方々との「対話」の機会を生み出してきました。
まだ「共創」という言葉も概念も日本に根付いていなかった2008年から始められたというのは、まさに岡村さんの京都に対する明確な「意志」の賜物です。
また、オフィス事業に関しても岡村さんの理念はウエダ本社にしっかりと浸透しています。
高度経済成長期の大量生産・大量消費の時代から、AIの台頭などで今の仕事の半数は無くなると予想されている中、「人財(個々の力)を生かす」ことが大変重要であり、従来型の「仕事=作業」といった考え方から、「仕事=価値を生み出す」へシフトしていかなければならないと強くおっしゃっていました。
人財を生かした本質的な働き方改革に取り組む企業を増やすためには、まず提案する自分たち自身が自律的にイキイキと働く会社環境にならなければいけません。
そのために、岡村さんは「制度」ではなく「風土」に注目されました。
「働き方改革の推進に伴い、ワーカーが働き”やすく”なる環境をつくるための制度はたくさん生まれたが、ワーカーが働き”がい”を感じる環境をつくる方がもっと大切ではないだろうか。そして、働きがいを感じる環境をつくるためには『風土』が重要である」
岡村さんは「風土づくり」のために、さまざまな施策を実行しました。
ウエダ本社の理念を定め、そこからウエダ本社に相応しい「人格ベーシック10」を定めました。それらを時間をかけて社内へ浸透させていく中で、社員が自主的に風土を良くするための活動を行うようになっていきました。そんなある日、一人の女性社員から「熱が出た子供を保育園に預けるわけにいかないので会社に連れてきたい」と申し出がありました。その日岡村さんは不在だったのですが、代表がいない中でも社員が「連れてきてもいい」と判断し、職場の床にタオルを敷いた簡易な形でしたが「子供と一緒に働く」ことが実現しました。周囲にいる社員も問題視することなく温かく迎え入れ、みんなで子供の面倒を見ながらその日の業務が遂行されたそうです。
社長である岡村さんが「そうしよう!」と判断したわけではなく、社員同士の話合いの中で判断されたことが素晴らしく、そのような事象が生まれる「風土」がしっかりと培われていたからこそ起きた出来事でした。
そして、中小企業では一人ひとりの社員の力が非常に重要で、働く育児中の女性の力もちゃんと大切にしないといけません。それはこれまでの「当たり前」や「常識」にはなかった判断かもしれませんが、このような課題から「新しい働き方」が生まれていくことを目の当たりにしました。
女性活躍実践の最前線にいらっしゃるみなさんからのゲストトークは、女性を励まし勇気づけるようなメッセージに溢れていました!本当に胸が熱くなりました。
後編は、そんな素晴らしいゲストのみなさんによるパネルディスカッションです!
果たしてどんなトークが飛び出したのか?!
女性活躍の本質に迫るセッションは、必見です!
REPORT
2021年2月22日に開催した、「晋也と一也のIX道場 vol.02」のイベントレポートをmatsu-lab(関西大学社会学部・松下ゼミ)のメンバーが作成してくれました。
独自の視点でトークショーの内容がより深掘りされた内容になっており、イベント参加不参加に関わらずおもしろい内容となっております。ぜひお読みください!
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REPORT
2021年1月27日に開催した、「晋也と一也のIX道場 vol.01」のイベントレポートをmatsu-lab(関西大学社会学部・松下ゼミ)のメンバーが作成してくれました。
2人のメンバーによる、それぞれ違った視点でのレポートをお読み頂けます。トークショーの内容がより深掘りされた内容になっており、イベント参加不参加に関わらずおもしろい内容となっております。ぜひお読みください!
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REPORT
2020年10月19日~2020年12月21日 全9回開催した、「秋だ!学びだ!多様な生き方・働き方を学ぼう 大阪大学『現代キャリアデザイン論II』」のイベントレポートをmatsu-lab(関西大学社会学部・松下ゼミ)のメンバーが作成してくれました。それぞれ違った視点からのレポートは、イベント参加不参加に関わらずおもしろい内容となっております。ぜひお読みください!
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「これからのはたらく」を知りたい方、考えたい方、つくりたい方、相談したい方、見学したい方、仲間が欲しい方・・・
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