REPORT

ダイバーシティ&インクルージョンの推進と多様な働き方~開催レポート~

BEE ACADEMY

働き方改革が進む中、長時間労働を是正する取組みは広がりをみせています。いわゆる「ホワイト企業」であることは人材を確保するためのひとつの鍵となっています。これから人生100年時代を迎え、人口が減る日本では、女性やシニアが働き続けることは一般的になっていきそうです。それぞれの事情や、多様な価値観を持ったワーカーが活躍できる働く環境へのシフトが求められています。
今回のBEE ACADEMYでは、オカムラの働き方改革の一環として、ダイバーシティ推進プロジェクト(通称ソダテルプロジェクト)にフォーカスし、まずは優先課題であった女性活躍の取組みを中心にご紹介しました。

課題を通してこれからの「はたらく」を考える

座学だけではなく、インタラクティブなトークセッションがくり広げられました!

「女性活躍」は女性のためだけに必要な施策ではありません。本イベントでは、男女問わずたくさんの方にお越しいただき、課題を通してみなさんとこれからの「はたらく」について共に考えました。

オカムラの「ソダテルプロジェクト」

オカムラのダイバーシティ推進室室長 望月 浩代

まずはじめに、望月よりオカムラのダイバーシティ推進プロジェクト・通称「ソダテルプロジェクト」についてお話させていただきました。
オカムラでは、

・長時間労働
・ソリューション企業への脱皮
・優秀な人材の確保

といった課題解決のため、様々な働き方改革のプロジェクトチームが発足されています。その内の一つがソダテルプロジェクトです。
労働人口の減少が顕著な日本において、女性は均等の時代(雇用機会均等法)、両立の時代(育児休業法)を経て、活躍の時代(女性活躍推進法)に入っています。
しかしながら、その必要性が議論されても、日本の現在の職場環境はとても女性が活躍していると言えません。
ジェンダーギャップ指数※1 では144か国中114位であったり、女性管理職が他の先進国に比べて圧倒的に少ない状況があります。女性が政治・経済の意思決定に参加する機会はまだまだ不十分であるといえます。

国際社会からのプレッシャーもある中、2016年4月に国が施行したのが女性活躍推進法。従業員が301人以上の企業には次の「3つの義務」が課せられます。

・自社の女性の活躍状況の把握・課題分析
・行動計画の策定・届出・公表
・自社の女性の活躍に関する情報公表

これを受けてオカムラが策定した行動計画が「2019年3月31日までに女性従業員比率を20%にする」。さらに、次のことを実現するためにソダテルプロジェクトが発足されました。

①女性をはじめとする多様な人材の活躍推進
②仕事と生活の充実
③キャリア形成ができる組織風土

自社内の全女性社員にアンケートを取り、意識調査をし現状を把握し、課題をあぶり出したところ、オカムラで可能な限り働き続けたいし、昇進・昇格にもそれなりに意欲はあるものの、出産・育児によって時間の制約が生まれ、キャリアプランが描きにくいと感じている女性が多数いることがわかりました。
女性活躍の目指す姿と女性活躍に関する現状認識の間にあるギャップをなくすため、在宅勤務を制度化したり、時短勤務者にもフレックスを適用することによって有休を取得しなくてもより柔軟に働けるようにしたり、と様々な施策をスタートしています。

※1世界経済フォーラムが公表した、各国における男女格差を測る​指数​(http://www.gender.go.jp/public/kyodosankaku/2017/201801/201801_04.html

女性活躍

オカムラがチャレンジしているこれからの働き方

オカムラのフューチャーワークスタイル戦略部 主任研究員 花田 愛

続いて、花田よりオカムラがチャレンジしている働き方についてお話させていただきました。

オカムラでは共創空間に来場されたみなさんを対象に様々な意識調査を行っています。
その意識調査によれば、プライベート(家事・育児・介護)とバランスよく両立させた働き方を望む方が多く、より良い働き方をもたらすには労働時間の自由度が増すことが大切だと考えている方が多いことがわかりました。
状況的にも人口オーナス期(若者の比率が低く、高齢者の比率が非常に高い人口構造の状態)に突入している日本では、女性が働き手を担うのは重要なことであり、現行多くの女性が出産後も働いています。しかし育児・家事の負担のほとんどを女性が被っており、前述のバランスよく両立させた働き方はなかなか難しいという現実があります。
そこでオカムラでは、在宅勤務制度を育児・介護中の希望者を対象にスタートさせました。まずは対象者を決めてスモールスタートし、これから対象者拡大の取組みもしていく予定です。本人の意思だけでなく、上司の判断、周囲の影響も考慮しながら進めています。

在宅勤務は現在女性で44%、男性で4%の方が申請しています。この数字からみても、育児・介護は女性がするもの、というバイアスが強く残っていることがわかります。在宅勤務の申請者を職種別に見てみると、スタッフやデザイン職の方が多く、営業職の方は少ない傾向がわかります。
在宅勤務制度の導入が難しい…と感じられている方は、社内で「固定席」を見直すことは結構重要かもしれません。いつも同じ場所にその人がいる固定席から、ワーカーが自由に働く座席を選べる「フリーアドレス」、ワーカーが働き方や目的を考慮し、オフィス内で自由に場所を選択して働くことができる「ABW(Activity Based Workplace)」を導入することで、固定席に縛られないテレワークに慣れて在宅勤務もそんなにイメージしづらいことではなくなります。意識調査の結果から、フリーアドレスでは部門間を超えたコミュニケーションが増えたり、ペーパーレス化が進み、ABWだと集中できる時間が増えて生産性が上がる、といった効果があります。また、テレワークでは仕事の効率が上がり、タイムマネジメントが向上するという効果もあります。

実際に在宅勤務を実施している社員・その周りの社員へのアンケートでは、次のような結果が出ました。

◆在宅勤務で実現できたこと(利用者本人)
・休まず業務が行えた
・集中時間が確保できた
・通勤時間を有効活用できた

◆在宅勤務の利用価値はなにか(利用者の上司・同僚)
・育児や介護との両立
・通勤負担の軽減
・時間の有効活用
・業務の効率化

業務に支障のない在宅勤務の頻度については利用者本人は「週1回」が一番多い回答で、利用者の上司・同僚は「週2回」が一番多い回答でした。職種にもよりますが、業務の調整ができており、周囲と共有できていれば、利用者本人以上に周りの人は特に問題がないと感じていることがわかりました。

今後は、定型的な仕事はAIに奪われる。平均寿命が100歳を超えるなど、これまでとはまったく違う状況が予想され、団塊の世代が後期高齢者になるこれからが、介護と仕事の両立が本格的に問題になってきます。
このような状況からも、多様な人材による柔軟な働き方への改革は待ったなしで求められています。

クロストーク!

ここまでのゲストトークをもとに、同じテーブルのみなさんで疑問・感想を共有していただきました。
それぞれ環境も制度の進み方も違う方との共有は、自社の現在地を確かめるきっかけになったのではないでしょうか。
その後、各テーブルからゲストに聞いてみたいこと・感想を発表いただきました!

従業員の立場では柔軟な働き方は大変魅力的だと思いますが、経営者の立場ではそれが業績にどう直結するかが課題だと思います。制度を取り入れて業績は変わりましたか?

望月:目に見えた数値化ができるところまでもう少し時間がかかると思います。ですが、例えば在宅勤務を利用してもオフィスと変わらない生産性が出せるのであれば、オフィスにいなくても生産性は落ちないということが言えます。さらに、在宅による通勤時間の削減などで生まれるプラスアルファの時間を仕事にあてることができ、より生産性は上がっていると言えます。また、弊社としても自分たちの働き方改革の取り組みをお客様に伝えることよって、オフィス家具だけでなく、働い方改革のコンサルから受注に繋がっている事例もあります。そういった意味では、成果が少しずつ見えてきています。

花田:リクルーティング・人材採用でも効果があります。どんな環境でどんな働き方ができるかは学生にとっての関心も高まっているように感じます。大学ではラーニングコモンズといった、図書館とカフェが一体になったような場所でグループワークをしたり、アクティブラーニングといった授業の形が増えており、主体的に学ぶことに重点が置かれています。
企業においても主体的な働き方ができるかどうかは非常に重要なことです。

自社も女性従業員の割合が少なく、事業部間で縦割りになっているため、女性従業員同士の横の連携を強める企画を考え中です。実践してみて評判のよかったワークショップなどがあれば教えてください。

望月:「身近にいる素敵な女性について」というテーマや、キャリアについてこれからどうなっていきたいかを描くきっかけづくりとなるコンテンツ、また、仕事とライフのどちらも含めた中で、「死ぬまでにやりたい3つのこと」をグループごとに共有してもらい、発表してもらったものもとても好評でした。

花田:聞く一方じゃなく、チームごとに自分たちで考えて発表の場があると横部署の方とも打ち解けやすいと思います。インプットだけでなく、アウトプットの時間があることが大事ですね。

働き方改革が日本ではなかなか進まないのは男性社員が保守的なことも関係あるのではないでしょうか。例えば、男性社員が育児休暇を取ろうとするとどうしても出世に影響するのでは…と考えてしまったり。頭の固い男性社員の理解を進めるにはどうすればよいでしょうか。

望月:オカムラでは社長含めた経営層がレビューボードとして、報告会をたびたび行っています。最初はピンときていないことも、何度も何度も伝える場を持つことで、だんだん自分事と感じてもらえるようになりました。今では新しくできた制度をトップダウンで浸透させるようにまでなりました。次は中間管理職への浸透が課題ですね。

花田:イベントでは社長メッセージで、「私は女性活躍推進のトップリーダーです!」ということを宣言してもらいました。一回限りにならずに発言してもらう場を持つことで、理解を深めてくれている男性の上司の方も増えていると信じています(笑)。

障がい者の雇用はしていますか?

望月:法廷雇用率で定められた2.2%ちょうどの方々を雇用しています。生産現場では全体の3%ほどが障がい者の方です。中にはメンタル障がいの方もいらっしゃいますが、長期定着が難しいのが課題です。 

花田:以前、社内イベントを開催した際に、聴覚に障がいのある方が2名参加してくれました。手話を入れての初めてのイベントでした。遠方で参画できない方にはWeb参加をしてもらうなど、色々な方に参加してもらえる工夫をこれからもしていきたいです。また、障がい者の方がどのような環境だと働きやすいかといったことについても研究所で取組みを進めています。

自社でも女性活躍は課題になっていて、ロールモデルがいない中、管理職挑戦の打診を計っても、「私には自信がないので」と遠慮されてしまいます。

望月:オカムラでも、部長職の女性はいても取締役の女性はまだいない状況です。たしかに直接打診をすると「私にはできない、自信がない」と言われてしまいますが、実は「やってみたいけど自信がない」というのが正しいと思います。まだまだロールモデルが少ないですから。
部長職の女性も、いきなり伝えられたのではなく、「いずれ君はこうなってこんな仕事をするようになる」と上司からずっと言われてきていて、徐々にその意識が芽生えていったと言っていました。長い目で見て、「いずれはこうなって欲しい」という共有がずっとできていると段々変わってきます。
また、「役が人を作っていく」ということもありますので、信じて任せる、という上司の気持ちも大事ですね。

「横展開」していこう!

部門横断プロジェクト、マルチステージを楽しもう!

オカムラのソダテルプロジェクトもWORK MILLプロジェクトも、部門横断のプロジェクトです。縦割りの一つの部署にとどまらず、プロジェクトごとにいろんな人と仕事をする。それだけでもより新しいアイデアが生まれやすくなり、自分の新たな強みを発見することもできます。
教育→仕事→引退、と人生が3ステージで終わるのではなく、不確実で将来を描きにくい時代だからこそ、マルチステージに、枠にとらわれずに生きる柔軟性がとても大切です。
さらに自社だけにとどまらず、社外の方とも横展開をしていくことが様々な形で今後の財産になっていきます。
beeはそのお手伝いをできる場として、これからも活動していきます!

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